分析的観察研究

臨床医が臨床医であるために

臨床医が臨床医であるために

大それたタイトルを付けてしまいましたが、研修医のころからずっと考えてきたことに、最近すこし答えが見えかかってきたように感じることもあり、あえてここに記しておこうと思います。

 

もう10年以上前になりますが、とにかく臨床医として早く一人前になりたいと願って、研修医生活を送りました。

 

まずベッドサイドに張り付いて患者さんの状態を観察することが一番大事だと思い実践しました。教科書もよく読みました。

 

次第に教科書だけでは物足りなくなり、関連学会にたくさん参加して、一流と言われる臨床医の言葉を少しでも吸収しようとメモを取りました。

 

人体の仕組みをもっと知りる必要があると思い、とある研究室に飛び込んで研究に没頭しました。

 

これらのことはそれぞれ大変勉強になり、得られた知見は臨床現場で血肉となって役立っています。

 

しかし、もっとも大きな転機は2011年、震災の年にありました。震災2週間後に気仙沼方面の支援活動に参加しましたが、短期間の活動中にも臨床医にとって大切な何か、に気づきがありました。

 

その年、臨床研究を体系的に学ぶ機会を得て、その気づきは具体的なものになっていきました。

 

「臨床医を、医療者を元気にすることが、地域医療を元気にするということです。」

 

もともと健全な精神の臨床医が、職場によってはやりがいを無くし、疲弊して去っていくことは大きな損失です。

 

臨床医は、どのようにしたら臨床医として充実した日々を送ることができるしょうか。そのキーワードに臨床研究があるような気がしています。

自分の診療に疑問を持つ

臨床医の日常はこの繰り返しだと思います。

 

外科に限らず、臨床は一発勝負な部分が多いので、失敗したときにこれで良かったのか、もっと良い方法があったのかを知るすべがありません。

 

個々の症例に関しては無理でも、過去の症例から学ぶことはできます。一人の臨床医が経験できることはかなり限られていますが、同僚や先輩の体験談をヒントに診断にたどり着いたケースもありますし、またそのような口コミだけでなく、Pubmedのようなサイトが無料で自由に使えるというのはとても素晴らしいことだと思います。

 

しかしそれにも限界があります。知りたいことを調べても意外に答えが明確でないことが多いですし、別々の文献に相反する内容が書かれていることもあります。

 

自分の疑問に自分自身で答えを出しながら、それを他の臨床医と共有し、高めあう環境が出来たらどうでしょうか。私はそれこそが理想とする臨床医だと思っています。

 

自分の疑問を解決するためには、自分自身で臨床研究を設計する知識が必要ですが、それを身に付けておけばどんな環境でも臨床研究は持続可能です。

 

 

 

大型の臨床試験でなくても

十分に良いジャーナルは狙えます。

 

そのためには、分析的観察研究の手法を高める努力をすること、が第一条件になります。

 

アウトカム研究のサイトでも、自分自身の研究論文を題材に議論してまいりました。私のサイトでは自分がやったことのない(論文を書いたことのない)研究デザインは扱わない、こととしています。一度もやったことのない研究デザインへの批判を耳にすると多くは見当違いだと思うことが多いからです。臨床医であっても、方法論をしっかり学び、解析を人任せにするのではなく自分自身で生データをいじってみることが一番勉強になることだと思います。

 

私はこれまで4本のRCTを報告しました。しかし、分析的観察疫学をしっかり行った研究は、これら4本を凌駕するインパクトの高い雑誌に掲載されました。

 

以下、「LOC-1Study」を題材として一緒に考えていただければと思います。

 

臨床試験でなくても、ビッグデータ解析でなくても、しっかり分析的疫学手法を深めていくことで外科のトップジャーナルも射程圏内であるということを示したいと思います。

 

こうした成果は臨床医が日々の臨床を一生懸命やることで蓄積されたデータが、そのまま世の中の役に立つということであり、それこそが臨床医が臨床医として元気に活動することにつながると信じています。


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